どうもDimです。
今回はネイチャーポジティブについて解説します。
2025年12月26日、今年も残すところあと僅かとなりました。
冬の澄んだ空気の中で、ふと私たちの足元にある大地や、空を舞う鳥たちに目を向けてみると、ある変化に気づくはずです。
かつて当たり前だった景色が少しずつ変容し、失われつつある生命のつながりが世界中で危惧されています。
そんな中で今、国際社会や企業の枠組みを超えて、私たち一人ひとりの生き方にまで影響を及ぼし始めているキーワードが「ネイチャーポジティブ」という考え方です。
これまでの環境対策は「これ以上壊さない」という守りの姿勢が中心でした。
しかし、これからは「積極的に回復させる」という攻めの姿勢が求められています。
なぜ今、この概念がこれほどまでに注目を集め、私たちの暮らしにとって不可欠な指標となっているのでしょうか。
その核心を、実直な視点で丁寧に紐解いていきます。
「先に結論を言います!」
☑️現状維持ではなく、積極的に自然資本を増やすプラスの行動
☑️企業だけでなく個人の消費選択や生活習慣が最大の推進力になる
1. ネイチャーポジティブが意味する真の価値
ネイチャーポジティブとは、日本語で「自然再興」と訳されることが多い言葉です。
具体的には、2025年を基準として、2030年までに生物の多様性が失われる流れを食い止め、反転させて回復の軌道に乗せることを指します。
例えるなら、地球という銀行の預金(自然資本)が底をつきかけている今、引き出しを止めるだけでなく、利息をつけて預け入れを増やしていくようなイメージと言えます。
かつてのサステナビリティは、環境負荷をゼロにする「ネットゼロ」を目指すことが主流でした。
しかし、ネイチャーポジティブはそこから一歩踏み込み、失われた森や湿地、海洋生態系をかつての豊かな姿以上に修復することを目指す積極的な哲学です。
なぜなら、人間の経済活動は100%自然の恵みに依存しており、生態系が崩壊すれば私たちの社会基盤そのものが成立しなくなるからです。
この概念が目指すゴールは、2050年までに「自然と共生する世界」を実現するステップとして、極めて重要なマイルストーンとなります。
大切なのは、単なる理想論ではなく、科学的な根拠に基づいた回復目標を設定し、実効性のあるアクションを積み重ねる姿勢です。
生物多様性の損失を止める緊急性
世界経済フォーラムの報告によれば、世界のGDPの半分以上が中程度、あるいは高度に自然へ依存しています。
噛み砕いて言うと、私たちが口にする食べ物、着ている服、住んでいる家を支える材料はすべて、健全な生態系のサイクルから生み出されているわけです。
しかし、現在は過去数百万年の平均よりも数百倍から数千倍という速さで種が絶滅しています。
この危機的な状況を打開するため、2025年のCOP15では「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、世界中でネイチャーポジティブへの取り組みが加速しました。
つまり、今この瞬間から「壊す」から「創る」へと意識を切り替える必要があるのです。
守りから再生へのパラダイムシフト
これまでの環境保全は、特定の絶滅危惧種を保護したり、開発を制限したりするスポット的な活動が主でした。
もちろんそれも重要ですが、ネイチャーポジティブは社会のシステム全体を「自然を豊かにする仕組み」に作り替えることを提唱しています。
例えば、農業であれば農薬や化学肥料の使用を抑え、土壌の微生物を増やす「再生型農業(リジェネラティブ・アグリカルチャー)」への転換が挙げられます。
都市開発であれば、コンクリートで固めるのではなく、植物の力を利用して防災や気温上昇抑制を行う「グリーンインフラ」の導入が進んでいます。
と言うわけで、環境を良くすることが経済的な利益にもつながる、新しい時代のルールが始まっているのです。
2. 社会全体がシフトする大きな潮流
現在、ネイチャーポジティブは個別の環境活動という域を超え、世界のビジネスや投資のルールを劇的に変えています。
具体的には、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)という枠組みが誕生し、企業が自社の活動がどれだけ自然に依存し、どれだけ影響を与えているかを公表することが求められるようになりました。
これは、自然を大切にする企業が投資家から評価され、資金が集まりやすくなる仕組みです。
かつては環境活動はコストと考えられていましたが、今や「ネイチャーポジティブへの貢献」は企業の競争力を左右する資産と見なされています。
以下の表に、これまでの「ネットゼロ」と、これからの「ネイチャーポジティブ」の違いをまとめました。
| 項目 | ネットゼロ(カーボンニュートラル) | ネイチャーポジティブ |
|---|---|---|
| 主な対象 | 温室効果ガス(CO2など) | 生物多様性・生態系サービス |
| 目標の性質 | 排出量を実質ゼロに抑える(現状維持・抑制) | 自然を回復軌道に乗せ、プラスにする(再生) |
| アプローチ | 排出削減・吸収・オフセット | 保全・修復・持続可能な管理 |
このように、ネイチャーポジティブはより包括的で、生命のネットワーク全体をケアする試みと言えます。
30by30(サーティ・バイ・サーティ)という国際目標
この潮流を語る上で欠かせないのが「30by30」という目標です。
これは、2030年までに陸域と海域のそれぞれ少なくとも30%を保全地域として守ろうとする国際的な公約となります。
要するに、地球の3割を「自然の聖域」として確保することで、生態系の回復力を高めようという計画です。
日本国内でも、国立公園の拡充だけでなく、企業が所有する森や、地域で守られてきた里山を「OECM(保護地域以外で生物多様性に貢献する地域)」として認定する動きが活発化しています。
私たちの身近な場所が、実は地球を救う重要な拠点になる可能性を秘めているのです。
「ネイチャーポジティブ経済」の誕生
自然を再生することが新しいビジネスチャンスを生む時代が到来しています。
例えば、劣化した土地を森に戻すための植林技術や、水質を浄化するバイオテクノロジー、さらには生態系の状況をモニタリングするリモートセンシングなどの分野が急成長しています。
例えるなら、これまでの経済は地球の資源を削って利益を出していましたが、これからは地球を育てることで富を生み出す「循環型の富」の創出です。
この変化は、私たちの消費活動にも大きな影響を与えます。
自然に配慮して作られた製品を選ぶことが、そのままネイチャーポジティブへの貢献になるというサイクルが構築されつつあります。
3. 私たちの暮らしに取り入れる自然再生の種
「ネイチャーポジティブ」と聞くと、国や大企業が取り組む壮大なテーマに感じるかもしれません。
しかし、実際には私たち一人ひとりの日々の選択こそが、最も強力なエンジンとなります。
なぜなら、消費者の需要が変われば、企業はそれに応えるために生産活動を自然配慮型へと変えざるを得ないからです。
具体的には、まず自分自身の「ネイチャーフットプリント」を意識することから始めましょう。
自分が使っている製品が、どこで、どのように作られ、現地の生態系にどんな影響を与えているかを知る好奇心が第一歩となります。
噛み砕いて言うと、買い物という投票を通じて、自然を再生しようとする組織や商品を支援するイメージです。
日常の中でできるアクションは、実はたくさん存在します。
・地域の在来種を植えて、自宅のベランダや庭を小さな「生物の避難所」にする
・プラスチックの使用を減らし、マイクロプラスチックによる海洋汚染を防ぐ
・地産地消を心がけ、輸送によるエネルギー負荷と土地改変を抑制する
ガーデニングから始める生態系支援
もし小さな庭やプランターがあれば、そこは立派なネイチャーポジティブの実践場となります。
見栄えを良くするために外来種の派手な花を植えるのではなく、その土地にもともと自生していた草花を選んでみてください。
それだけで、その花粉を求めて地域の蝶や蜂が集まり、それらを食べる鳥たちが訪れるようになります。
大切なのは、人間の都合だけで作る「整えられた自然」ではなく、命が連鎖する「生きた庭」を目指すことです。
農薬を使わずに土壌を育てることで、土の中の微生物も多様になり、炭素を貯蔵する力も高まります。
エシカルな消費が世界を変える
私たちが日々購入する食材の裏側には、広大な農地や水資源が存在します。
例えば、熱帯雨林を切り開いて作られたパーム油ではなく、持続可能な方法で生産された油を使った製品を選ぶだけで、遠く離れたジャングルのオランウータンを守ることにつながります。
例えるなら、私たちの財布は、未来の地球を形作るための魔法の杖のようなものです。
安さだけを追求するのではなく、その価格の中に「自然への敬意」が含まれているかどうかを見極める感性を磨いていきましょう。
4. 未来世代へ繋ぐための長期的な視点
ネイチャーポジティブの実現には、一時的なブームで終わらせない粘り強さが必要です。
自然の回復には時間がかかります。
木を植えても森になるまでには数十年かかり、一度失われた湿地が本来の機能を取り戻すにも、気が遠くなるようなプロセスを要します。
そのため、私たちは「今の世代」だけの利益を考えるのではなく、100年後の子供たちが享受する風景を想像しながら行動しなければなりません。
教育の現場でも、ネイチャーポジティブの概念を学ぶ機会が増えています。
自然は「守る対象」である以上に、私たち自身の「一部」であるという認識を育むことが、真の解決に向けた鍵となります。
「ネイチャー・ポジティブ・ジャーニー」を歩む
完璧を目指す必要はありません。
すべてを一度に変えることは難しくても、昨日の自分よりも少しだけ自然に優しい選択を積み重ねていく「旅(ジャーニー)」のような感覚で進むのが良いでしょう。
今日選んだコーヒーが、熱帯の森を守る認証品だった。
週末に近くの公園の清掃ボランティアに参加した。
そうした小さな成功体験が、やがて大きな社会のうねりとなって地球を再生させる力へと変わります。
私たちが自然に対して「プラス」の行動を一つ行うたびに、未来の可能性が一つずつ広がっていくわけです。
テクノロジーと伝統の融合
ネイチャーポジティブを加速させるために、現代の科学知見と、古くから伝わる先住民族の知恵を融合させる動きも注目されています。
例えば、AIやドローンを使って広範囲の植生を管理しながら、一方でその土地に伝わる水管理の手法を取り入れるといった取り組みです。
伝統的な暮らしの中には、自然を搾取せずに共生するためのヒントが数多く隠されています。
新しい技術を「自然を支配するため」ではなく、「自然の回復力を助けるため」に使うことができれば、ネイチャーポジティブのスピードは格段に上がるはずです。
5. 困難を乗り越える共通のビジョン
ネイチャーポジティブへの道には、当然ながら多くの課題も横たわっています。
経済成長と環境回復をどう両立させるか、食料供給を確保しながらどうやって土地を自然に返すのか。
これらの問いに簡単な答えはありません。
しかし、ネイチャーポジティブという共通のゴールがあることで、対立していたセクター同士が手を取り合うための土壌ができています。
政府、企業、科学者、そして私たち市民が、同じ「地球再生」という目標に向かって対話を続けることが、今最も求められています。
ネイチャー・ウォッシングを避けるために
注意しなければならないのは、見せかけだけの環境貢献、いわゆる「ネイチャー・ウォッシング」です。
形だけ木を植えて、裏では生態系を破壊し続けるような行為は、ネイチャーポジティブの本質から最も遠いものです。
私たち消費者は、情報の表面だけを見るのではなく、その活動が本当に長期的な回復に寄与しているのかを厳しく、かつ温かく見守る眼を持つ必要があります。
情報の透明性が高まるこれからの時代において、誠実な取り組みを行う主体こそが信頼を勝ち得ることになるでしょう。
最後は「愛」と「好奇心」
難しい議論を重ねることも大切ですが、結局のところ、ネイチャーポジティブを支えるのは、私たちが自然を愛おしいと思う気持ちです。
足元に咲く名もなき花に美しさを見出し、森の匂いに心を安らげる。
そうした原体験があるからこそ、私たちはこの豊かな世界を次世代に残したいと強く願えるのです。
知識として理解するだけでなく、週末にはぜひ自然の中に身を置き、その鼓動を感じてみてください。
そこから湧き上がる「守りたい」「もっと豊かにしたい」という純粋な想いこそが、ネイチャーポジティブを推し進める最大の源泉となります。
ネイチャーポジティブに関するQ&A
Q1. ネイチャーポジティブに取り組む企業の商品を選ぶと、家計に負担がかかりませんか?
A1. 短期的には少し価格が高く感じられる場合もあります。しかし、環境負荷を抑えた製品は品質が長持ちしたり、ゴミの削減につながったりすることで、中長期的には支出を抑えられる側面もあります。また、環境破壊による災害リスクを減らすための「将来への保険料」と考えることもできるでしょう。無理のない範囲で、価値を感じるものから選んでいくのがおすすめです。
Q2. マンション暮らしで庭がありません。個人でできることはありますか?
A2. もちろん可能です。ベランダで小さな鉢植えを育てるだけでも、都市部を移動する昆虫たちにとっては貴重な休息ポイントになります。また、直接的な自然との触れ合いだけでなく、毎日の食事でオーガニックなものを選んだり、自然保護団体を寄付を通じて支援したりすることも立派なアクションです。何より、このテーマについて周りの人と話すだけでも、大きな一歩となります。
Q3. 2030年という期限は、本当に達成可能なのでしょうか?
A3. 非常に野心的な目標であり、簡単なことではありません。しかし、世界中で法整備が進み、多くの資金がネイチャーポジティブへと流れ始めています。技術革新のスピードも上がっており、私たちの意識が急速に変われば、不可能な数字ではないと言われています。大切なのは「無理だ」と諦めることではなく、今できる回復のアクションを一つでも増やす姿勢です。
今日のまとめ
今回は、2030年までに自然を回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」の本質と、私たちができる具体的な行動について詳しくお届けしました。
ここまでの内容を改めて振り返ってみましょう。
☑️現状維持ではなく、積極的に自然資本を増やすプラスの行動
☑️企業だけでなく個人の消費選択や生活習慣が最大の推進力になる
ネイチャーポジティブは、単なる環境運動ではありません。
それは、私たちがこの地球でこれからも豊かに生きていくための、新しい生存戦略であり、地球への感謝を形にするプロジェクトでもあります。
失われていくものに嘆くのではなく、これから育っていく緑や、増えていく命にワクワクしながら、新しいライフスタイルを楽しんでいきましょう。
みなさんのお役に立てば幸いです。
この記事が参考になったら、この記事にあるリンクを色々見てみてください!きっとお役に立つはずです。それでは良い一日を!
