どうもDimです。今回は「サーチュイン遺伝子」について解説します。
先に結論を言います!
– サーチュイン遺伝子は、老化や寿命の制御に重要な役割を果たすとされる遺伝子で、「長寿遺伝子」とも呼ばれています。
– サーチュイン遺伝子は、細菌から哺乳類まで、多くの生き物に備わっています。哺乳類では7種類が見つかっており、それぞれ異なる特性があります。
– サーチュイン遺伝子は、NADという物質によって活性化されます。NADは、カロリー制限や運動などで増やすことができます。
– サーチュイン遺伝子の活性化は、糖尿病やアルツハイマー病などの老化関連疾患の予防や治療に効果があると期待されています。
サーチュイン遺伝子とは何か?
サーチュイン遺伝子とは、その活性化により生物の寿命が延びるとされる遺伝子です。
サーチュイン遺伝子の活性化により合成されるタンパク質、サーチュイン(英語 Sirtuin )はヒストン脱アセチル化酵素であるため、ヒストンとDNAの結合に作用し、遺伝的な調節を行うことで寿命を延ばすと考えられています。
このようなサーチュインの作用メカニズムは、マサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテ教授と今井眞一郎教授によって1999年に見出されました。
酵母のSir2遺伝子がヒストン脱アセチル化酵素であることを見出し、この酵素の作用が代謝や遺伝子サイレンシング、加齢に関与していることを示唆しました。
サーチュイン遺伝子の種類
サーチュインは単細胞の酵母から線虫、ショウジョウバエからヒトまで広く分布しています。酵母から初めて見つかった遺伝子はsir2と命名されました。
ヒトを含む哺乳類では7種類が見つかっておりSIRT1~7と命名されています。SIR2とSIRT1は極めて高い類似性を持ちます。
- SIRT1:血糖値を下げるインスリンの分泌を促し、糖や脂肪の代謝をよくしたり、神経細胞を守り記憶や行動を制御するなど、老化や寿命のコントロールに深く関与していると見られています。
- SIRT2:細胞分裂の調節に関与しています。パーキンソン病の発症にも関係していると考えられています。
- SIRT3:ミトコンドリアに局在し、エネルギー代謝や酸化ストレスの防御に重要な役割を果たしています。心臓や肝臓などの臓器の機能維持にも必要です。
- SIRT4:ミトコンドリアに局在し、インスリン分泌やアミノ酸代謝に関与しています。がん細胞の増殖を抑制する効果もあるとされています。
- SIRT5:ミトコンドリアに局在し、尿素回路やアンモニア代謝に関与しています。肝臓や腎臓の解毒作用に重要です。
- SIRT6:DNA修復や遺伝子発現の調節に関与しています。炎症反応や血糖値の制御にも必要です。
- SIRT7:核内に局在し、リボソームの合成や遺伝子発現の調節に関与しています。がん細胞の増殖を促進する効果もあるとされています。
サーチュイン遺伝子を活性化する方法
サーチュイン遺伝子は、NADという物質によって活性化されます。
NADは、細胞内のミトコンドリアにおけるエネルギーの産出に欠かせない補酵素で、サーチュインを活性化させる役割を担っています。
組織中のNAD量は加齢と共に減少しますが、NADを増やすことができれば、サーチュインを活性化させ老化を遅らせる効果を期待できます。
NADを増やす方法
NADを増やす方法として、以下のような方法が知られています。
- カロリー制限:カロリー制限は、代謝を改善し、NAD合成経路を刺激することで、NAD量を増加させます。カロリー制限は、サーチュイン遺伝子の活性化だけでなく、抗酸化作用や免疫機能の向上など、老化防止に多くの効果があるとされています。
- 運動:運動は、筋肉中のミトコンドリアの量や機能を高めることで、NAD量を増加させます。運動は、カロリー制限と同様に、代謝や免疫機能などにも良い影響を与えます。
- NMN摂取:NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)は、ビタミンB3からつくられる物質で、NADの前駆体です。NMNを摂取することで、体内でNADが合成されます。NMNは食品からも摂取できますが、量が少ないため、サプリメントとして摂取することもできます。
NAD以外のサーチュイン活性化物質
NAD以外にも、サーチュイン遺伝子を活性化する物質が研究されています。その代表例が、赤ワインに多く含まれるポリフェノールの一種、レスベラトロールです。
レスベラトロールは、2003年にサーチュイン遺伝子を活性化することが報告されました。その後の動物実験では、高カロリー食を与えられたマウスにレスベラトロールを投与すると、寿命が延びるとともに、肥満や糖尿病などの老化関連疾患の発症が抑制されることが示されました。
ただし、グラス一杯の赤ワインに含まれるレスベラトロールの量は実験に使われた投与量の0.3%に過ぎず、これは人間の体重に置き換えると1日にボトル100本前後飲まなくてはならなくなります。
赤ワインでサーチュイン遺伝子を活性化するのは非現実的です。 このため、レスベラトロールを始め、サーチュイン遺伝子を活性化する物質の研究が行われています。
米国ではレスベラトロールのサプリメントが販売され年間30億円を売り上げるヒット商品になっているそうです。
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サーチュイン遺伝子の活性化の効果
サーチュイン遺伝子の活性化は、老化や寿命だけでなく、様々な疾患の予防や治療にも効果があると期待されています。以下に、いくつかの例を挙げます。
糖尿病
SIRT1は、血糖値を下げるインスリンの分泌を促進し、筋肉や肝臓での糖や脂肪の代謝を改善します。これにより、高血糖やインスリン抵抗性など、2型糖尿病の原因となる状態を防ぐことができます。
例えば、SIRT1を欠損したマウスは高カロリー食を与えると肥満や高血糖になりますが、SIRT1を活性化させる物質を投与すると正常な体重や血糖値に戻ります。
また、SIRT1以外にもSIRT3やSIRT4も糖尿病と関係していることが分かっています。
SIRT3はミトコンドリアでエネルギー代謝を調節し、SIRT4はインスリン分泌やアミノ酸代謝に関与します。
これらのサーチュインも活性化させることで、糖尿病の予防や治療に役立つ可能性があります。
アルツハイマー病
SIRT1は神経細胞を守り、記憶や行動を制御することが分かっています。
SIRT1を欠損したマウスは記憶障害が見られますが、SIRT1を活性化させる物質を投与すると記憶力が回復します。
また、SIRT1はアルツハイマー病の原因となるアミロイドβタンパク質の蓄積を抑制することもできます。
アルツハイマー病の動物モデルにSIRT1を活性化させる物質を投与すると、アミロイドβタンパク質の蓄積が減少し、認知機能が改善されることが報告されています。
動脈硬化
SIRT1は血管内皮細胞を保護し、動脈硬化の進行を防ぐことができます。
SIRT1は一酸化窒素合成酵素(eNOS)を活性化し、一酸化窒素(NO)の産生を促進します。NOは血管を拡張させ、血圧を下げる効果があります。
また、SIRT1は炎症反応や酸化ストレスを抑制し、動脈壁にコレステロールが沈着するのを防ぎます。
動脈硬化の動物モデルにSIRT1を活性化させる物質を投与すると、動脈壁の肥厚や炎症が減少し、血流が改善されることが示されています。
今日のまとめ
今回は「サーチュイン遺伝子」について解説しました。
サーチュイン遺伝子は、老化や寿命の制御に重要な役割を果たす遺伝子で、「長寿遺伝子」とも呼ばれています。
サーチュイン遺伝子は、NADという物質によって活性化されます。
NADは、カロリー制限や運動などで増やすことができます。
サーチュイン遺伝子の活性化は、糖尿病やアルツハイマー病などの老化関連疾患の予防や治療に効果があると期待されています。